5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 売上総額の確認
5-6 仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 貸倒損失の計上
5-12 資産との区分が必要となる費用
5-13 交際費とその他周辺科目との区分
5-14 寄付金の取扱い
5-15 役員と法人間での建物貸借時の留意点
5-16 生命保険料
5-17 旅費・日当
5-18 福利厚生費
5-19 リース料の取扱い
5-20 決算確認報告書の記載事項
5-21 決算確認書
5-22 役員業務内容検討書
5-23 書面添付チェックリスト
5-24 消費税の確認ポイント
5-25 消費税申告の注意点
5-26 消費税チェックシート
5-27 源泉所得税の確認ポイント
1 決算確認ポイント

(1)売上原価の決算処理
その事業年度で仕入れた商品等が、全て売れていれば、その仕入金額が売上原価となります。しかし通常は、仕入れた商品等の一部が売れ残ってしまうものです。そのため事業年度終了の日の在庫をマイナスして、売上原価を計算する必要があります。このように計算した売上原価は、その事業年度の損金の額となります。

@売上原価の計算方法(棚卸資産の評価方法及び取得価額)
売上原価の計算方法は、以下のとおりです。

【商品等の物販の場合】
当期の売上原価 = 期首棚卸高 + 当期商品仕入高 ― 期末棚卸高


A棚卸の範囲
このように売上原価を計算する上で必要な棚卸を行う資産の範囲は、次のとおりです。これらの資産を「棚卸資産」と言います。

 ● 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む)
 ● 半製品
 ● 仕掛品(未成工事を含む)
 ● 主要原材料
 ● 補助原材料
 ● 消耗品で貯蔵中のもの
 ● その他これらに準ずるもの

B棚卸資産の評価(棚卸高の計算方法)
棚卸高は、棚卸資産の期末在庫の数量を調査し、その数量に仕入単価を乗じて計算します。在庫は、実際の数量を棚卸等により確定できます。しかし、仕入単価は、その事業年度中に同一であるとは限らないので、違う単価で仕入を行った場合があることを想定した棚卸資産の評価が、必要になってきます。
棚卸資産の評価は、次の原価法か低価法のいずれかによります。但し、税務署長の承認を受けた特別な方法によることもできます。いずれの方法によるのかは、各法人にまかされています。

■ 原価法
原価法とは、棚卸資産の取得価額で評価する方法です。さらに次の8種類に分類されます。
評価方法
内  容
個別法 期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額で評価する方法。
先入先出法 先に仕入れたものから順次払い出されたと想定して、期末棚卸資産の評価を行う方法。したがって先入先出法では、期末近くに購入した棚卸資産ほど期末の残るとみなして評価が行われる。
後入先出法 後から仕入れたものから順次払い出されたと想定して、期末棚卸資産の評価を行う方法。したがって後入先出法では、期首近くに購入した棚卸資産ほど期末に残るとみなして評価が行われる。
総平均法 同一種類等ごとに「期首棚卸資産の取得価額の総額」と「その事業年度に取得した棚卸資産の取得価額の総額」との合計額を総数量で割って平均単価を計算し、それをもとに評価する方法。
移動平均法 同一種類等ごとにその棚卸資産を取得するたびに、そのときまでの取得価額の総額と取得した棚卸資産の取得価額の総額との合計を総数量で割って平均単価を計算し、その事業年度終了の時から最も近い時に取得した時に計算し直した単価をもとに評価する方法。
単純平均法 同一種類等ごとにその事業年度に取得した棚卸資産の単価が異なるものがある場合に、その異なる単価のみの平均を計算し評価する方法。
最終仕入原価法 同一種類等ごとにその事業年度終了の時から最も近い時に取得した棚卸資産の単価により評価する方法。
売価還元法 同一種類等・同一差益率等ごとにその棚卸資産の通常の販売価額に原価率を乗じて計算した金額をその取得価額とする評価方法。

原価率は、次の計算方法により求めることができます。

■ 低価法
低価法とは、前記(1)の原価法により評価した金額と期末時価とのいずれか低い価額により評価する方法です。この方法を採用すると、期末棚卸高が少なくなり、売上原価が多くなるため、いわゆる粗利が少なくなり、その期の法人税の負担を軽くすることができます。
ただし、会社は継続して存続していますので、各期を通算するとプラス・マイナス・ゼロになります。本来の節税とは異なりますので注意が必要です。

■ 評価方法の選定及び届出
棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごとに、かつ、その資産の区分ごとに選択することとなっています。
@「棚卸資産の評価方法の届出書」
新設法人の場合は、設立第1期の事業年度の確定申告書の提出期限までに、選択しようとする評価方法を記載した 「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署長に提出することとなっています。

A「変更承認申請書」
棚卸資産の評価方法を変更しようとする時は、変更しようとする事業年度の開始の日の前日までに変更理由等を記載した「変更承認申請書」を税務署長に提出しなければなりません。その事業年度終了の日までに承認又は却下の処分が無い場合は、承認されたものとして取り扱います。

B3年間の継続適用
特別な理由がある場合を除き、一度選択した評価方法を採用してから3年を経過していないときは、変更は認められませんので注意して下さい。

C法定評価方法
棚卸資産の評価方法の届け出をしなかった場合には、最終仕入原価法により評価を行うことになっています。

■ 棚卸資産の取得価額及び時価
棚卸資産を評価する上で必要となる取得価額や時価の解釈は、それぞれ次のようになります。

@取得価額
  1 その資産の購入代金(引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税・その他購入に要した費用を含む)
  2 その資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額

次の費用の合計額が、購入代金のおおむね3%以内のときは、取得価額に含めないで費用とすることができます。

買入事務、検収、整理、選別、手入等に要した費用の額
販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
特別な時期に販売するため、長期にわたって保管するために要した費用の額


A時価
低価法における時価とは、その事業年度終了の時におけるその取得のために通常要する価額です。つまり、企業会計上の再調達価額(購入に要する金額)となります。新たに購入するために必要となる金額ということができます。

(2)仕入れ計上時期のずれによる過大計上の有無の確認
@相手から通知があったときに処理していることの確認
仕入値引の通知を期末までに取引先から受けていたが未処理であることのないよう確認します。

A仕入返品したときに処理していることの確認
仕入値引や返品はその事実が確定した時点で計上しなければならないことから、取引先からの通知書などで確実に処理しているか確認します。


2 税務確認ポイント
(1)経理処理誤りによる仕入過大計上の有無の確認
@請求書に含まれる仕入以外の取引の処理が適正であることの確認
仕入先から購入した材料費の中に、資産計上しなければならない機械装置が含まれていることのないよう請求書の内容をよく確認して処理します。

A前払金の処理は適正であることの確認
期末に商品仕入の予約をし前払代金を支払ったものを、仕入に計上することのない請求書や仕入商品が届いているかどうかを確認してから処理します。

B仕入の二重計上の有無の検討
代金決済が終了しているのに、期末に仕入の二重計上をすることのないよう確認します。

(2)確認不足による仕入過大計上
@請求書からの転記誤りがないことの確認
請求書と仕入計上額が一致しているか確認することで過大計上は防止できます。
特に決算期末月には確実に行うことが必要です。

A個人的なものの混入はないことの確認
会社のものか個人のものか、請求書の内容をよく検討しましょう。

B市販の請求書、領収書の使用による取引が適正であることの確認
不審な取引について相手先を確認する反面調査が行われることがあります。
支払が現金の場合は、その支払者が適正に申告しているか疑われるので注意が必要です。

C通常の決済方法と違う取引が適正であることの確認
全ての取引が現金決済である取引先や、通常は振込決済であるのに現金決済となっているものなど、決済状況が通常と異なるものについては正当な取引か疑われるので注意が必要です。

D買掛金の残高管理が適正であることの確認
長期間買掛残高が多額なものについて、仕入の二重計上などとなっていないことを確認します。

E原価率など異常係数の確認
売上の時と同じように、原因が明確である場合を除き、異常係数となったときは確認をするなど注意が必要です。

(3)仕入れ計上時期のずれによる過大計上の有無の確認
@相手から通知があったときに処理していることの確認
仕入値引の通知を期末までに取引先から受けていたが未処理であることのないよう確認します。

A仕入返品したときに処理していることの確認
仕入値引や返品はその事実が確定した時点で計上しなければならないことから、取引先からの通知書などで確実に処理しているか確認します。

(4)リベートの処理確認
法人が業者等から受取るリベートは、金銭によるもの、物品によるもの、旅行への招待によるもの等様々なものがあります。このリベートは、その受取形態により税務処理上は、次のように分類され、取り扱うことになります。
すなわち、金銭や事業用資産によるリベートは、仕入割戻しとして仕入金額から控除することができます。

また、リベートの計上時期については、次のように定められています。

 @ 算定基準が明示されているもの〜仕入れた日の属する年度
 A 算定基準が明示されていないもの〜通知を受けた日の属する年度
 B 一定の事実に該当するまで積立てる特約があるもの〜受取った日、または利益を受けた日の属する年度

なお、非事業資産にはリベートを受けた場合は、雑所得となり、旅行、観劇等への招待によるリベートの場合は、処理不要となります。
リベートの範囲と処理は次のとおり



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