5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 医業収入総額の確認
5-6 医業仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 資産との区分が必要となる費用
5-12 交際費とその他周辺科目との区分
5-13 寄付金の取扱い
5-14 個人と法人間での建物貸借時の留意点
5-15 生命保険料
5-16 諸会費の取扱い(旅費・学会費等)
5-17 福利厚生費
5-18 リース料の取扱い
5-19 個人開業医の家事関連費
5-20 個人開業医の特例適用(措置法第26条)
5-21 決算方針書
5-22 決算確認報告書
5-23 決算自己チェック表
5-24 書面添付チェックリスト
5-25 消費税の確認ポイント
5-26 源泉所得税の確認ポイント
1   薬品・医療品の棚卸処理

(1)薬品・医療品の棚卸処理
決算では期末に在庫として残っている薬品等の品名ごとの数量・重量をカウントし、棚卸表を作成する。棚卸を行ったら帳簿上の在庫数量と見比べて、減少している分が棚卸減耗損ですので、薬品等の帳簿金額を減少させる。
よって、薬品等の有高帳を設けて在庫管理をしていなければ、減耗損を把握することが出来ないので、薬品等の有高帳を作成していることが条件となる。

棚卸減耗損 ××  商品 ××

@ 棚卸を行う理由
棚卸を行うと期末の薬品等の在庫数量・金額が分かります。棚卸を行う目的は期末薬品等の数量・金額を把握することだけではありません。もう一つの目的として、仕入金額の算定があります。
期首の在庫数量はすでに前期末の棚卸で分かっていますし、当期薬品仕入高は期中の処理で把握できますので、期末棚卸が分かれば自ずと仕入金額が分かるという仕組みです。
よって棚卸作業というのは、医院の仕入金額を決定するための非常に重要な作業なのです。
 
A 仕入金額の計算の仕組み
※期末在庫を計算すると仕入金額が求まる。

実地棚卸では、預り品、長期滞留品、陳腐化資産、簿外資産などの有無を確認することも重要。預り品は預り証と照合することで、その内容を確認する。長期滞留品、陳腐化資産は棚卸資産の評価替えを検討する必要がある。簿外資産は簿外となっている理由を確認し、資産計上する必要がないかを検討する。

【通常在庫以外の検討をする】
項  目 留意事項
預り品 預り証の入手、照合
長期滞留品 処分及び評価替えの検討
陳腐化資産 処分及び評価替えの検討
簿外資産 資産計上の検討

(2)棚卸の計上仕訳
棚卸資産の実地調査を行った後、次の仕訳を入力する。

預け薬品等の計上
実地棚卸に際しては、既に引渡しを受けたものの取引先保管となっているような預け品の計上も漏れなく行うことが大切である。
(例) 歯科医院における、技工所への預け金属等


2   棚卸の留意点

(1)未使用分の確認
決算期末近くにかけて大量に仕入れた薬品等で、未使用分が正確かつ漏れなく計上されているか確認が必要です。

(2)預け在庫の確認
決算期末に現品をメーカーや問屋等に預けている場合(歯科の場合は歯科技工所等)、そちらの「預け在庫」の計上漏れがないか確認します。

(3)届出評価方法の確認
在庫の評価方法は購入単価によることになっている。その単価の評価方法は種々あり、届出によって病・医院が任意に選択できるが、事前に届出をしていない場合には「最終仕入原価法」によることとなる。

(4)評価損、廃棄損の計上
棚卸の結果、薬品、材料に変質、陳腐化が発見された場合は、その全額を評価損、廃棄損として損失計上できる。
多額な評価損、廃棄損は税務調査で問題になることも予想されるため、廃棄した医薬品等について、品名、数量、金額、処分の日を記録し、写真などにより証拠を残しておく必要があります。

(5)値引き処理 添付薬品の取扱い
病医院が医薬品等の仕入れに伴って受け取るリベート(仕入割戻し)と、仕入値引きは、正しく区別して処理しなければならない。税法では、医薬品の仕入に伴って添付される医薬品(現品添付)については、実質的に値引きに該当するものとして取扱うことになっています。したがって、
実務上現品添付を受けた時点では、収入にはならずにそれを用いて診療した時点で使用され、残った医薬品を期末在庫に計上することになる。添付薬品が期末時点に残った場合の評価額は、例えば仕入単価500円の注射液を100本仕入れ、そのうち20本の添付を受けた場合には、以下のようになる。

   仕入単価500円×数量(100本)=50,000円 仕入金額
   仕入単価500円×数量( 20本)=10,000円 仕入金額
   仕入金額50,000円−仕入値引10,000円=40,000円 正味仕入金額
                    40,000円÷100本=400円 正味仕入単価 
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