2-1 仕訳の基礎を理解する
2-2 現金の入出金:具体的な処理事例
2-3 預金の入出金:具体的な処理事例
2-4 売掛金請求および掛仕入の処理事例
2-5 相殺取引の処理事例
2-6 受取手形の処理事例
2-7 支払手形の処理事例
2-8 給与支給の処理事例
2-9 固定資産購入時の処理事例
2-10 減価償却費の処理事例
2-11 賞与引当金の処理事例
2-12 保険積立金の処理事例
2-13 前払費用の処理事例
2-14 仮払金の処理事例
1   受取手形回収から満期の処理

企業取引では、売上代金を手形で回収する場合があります。この受取手形を回収した場合の処理から、手形が満期期日になった場合の処理についてみていきます。

ここで、受取手形とは通常の営業取引にもとづいて発生した手形債権を指します。したがって、固定資産の売却とか貸付金などの金融取引によって取得した手形債権は、この受取手形には含められません。

なお、手形には約束手形と為替手形とがありますが、会計上は両者を区別せず、手形上の債権を取得したか債務が発生したかにより受取手形勘定または支払手形勘定で処理します。

具体的には次のような取引となります。

(1)受取手形を回収した場合

事例1
○○商会の売掛金5万円について手形5万円を回収した。
借   方 貸   方 摘   要
受取手形 50,000円 売上高 50,000円 ○○商会 


(2)受取手形が満期期日で預金に入金になった場合

事例1
○○商会の手形5万円が満期期日で当座預金に入金となった場合
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 50,000円 受取手形 50,000円 ○○商会手形入金


2   受取手形を裏書譲渡した場合の処理

手形の裏書譲渡とは、受取手形を満期日前に他社に渡すことです。具体的には、自社の買掛金支払のために、受取手形を他社に譲渡することです。

手形の裏書譲渡の処理方法として、次のとおり3種類の方法があります。
 直接減額法(一般的で簡易な処理方法)
 評価勘定法
 対照勘定法


(1)直接減額法(一般的で簡易な処理法)
直接減額法では、裏書譲渡をした場合に受取手形を直接減額処理します。

事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 受取手形 50,000円 裏書譲渡 ○○商会
6/30期日

事例1
6/30○○商会の受取手形5万円が期日になった。
仕訳(会計処理)不要


(2)評価勘定法
評価勘定法では、裏書譲渡をした場合に「裏書手形」という勘定科目を使って処理します。

事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 裏書手形 50,000円 裏書譲渡 ○○商会
6/30期日

事例1
6/30○○商会の受取手形5万円が期日になった。
借   方 貸   方 摘   要
裏書手形 50,000円 受取手形 50,000円 ○○商会6/30期日


(3)対照勘定法
対照勘定法では、直接減額法の仕訳に追加で「手形裏書義務見返」と「手形裏書義務」いう一対の対照勘定を使って処理します。この対照勘定は今いくら裏書中であるかを明らかにする勘定です。

事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 受取手形 50,000円 裏書譲渡○○商会
6/30期日
手形裏書義務見返 50,000円 手形裏書義務 50,000円 裏書譲渡 ○○商会
6/30期日

事例1
6/30○○商会の受取手形5万円が期日になった。
借   方 貸   方 摘   要
手形裏書義務
50,000円 手形裏書義務見返
50,000円 ○○商会6/30期日


3 受取手形を割引した場合の処理

手形の割引とは、受取手形を満期日前に銀行に買い取ってもらうことを言います。銀行には、割引を行った日から満期日までの利息を支払うこととなります。

手形を割引した場合の処理方法としては、裏書譲渡と同じく次のとおり3種類の方法があります。
 直接減額法(一般的で簡易な処理方法)
 評価勘定法
 対照勘定法

(1)直接減額法(一般的で簡易な処理法)
 直接減額法では、割引を実行した場合に受取手形を直接減額処理します。

事例1
 ○○商会からの受取手形8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金 79,600円が当座預金に入金された。

借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 受取手形 80,000円 割引 ○○商会9/30期日
支払利息割引料 400円     手形割引料

事例1
9/30○○商会の受取手形8万円が期日になった。
仕訳(会計処理)不要


(2)評価勘定法
評価勘定法では、割引を実行した場合に「割引手形」という勘定科目を使って処理します。

事例1
○○商会からの受取手形8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金79,600円が当座預金に入金された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 割引手形 80,000円 割引 ○○商会9/30期日
支払利息割引料 400円     割引料

事例1
9/30○○商会の手形8万円が期日に決済された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 80,000円 受取手形 80,000円 ○○商会9/30期日


(3)対照勘定法
対照勘定法では、直接減額法の仕訳に追加で「手形割引義務見返」と「手形割引義務」いう一対の対照勘定を使って処理します。この対照勘定はいまいくら割引中であるかを明らかにする勘定です。

事例1
 ○○商会からの受取手8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金79,600円が当座預金に入金された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 受取手形 80,000円 手形割引○○商会
9/30期日
手形売却損 400円     割引料
手形割引義務見返 80,000円 手形割引義務 80,000円 裏書譲渡○○商会
9/30期日

事例1
9/30○○商会の受取手形8万円が期日に決済された。
借   方 貸   方 摘   要
手形割引義務 80,000円 手形割引義務見返 80,000円 ○○商会9/30期日


4 手形が不渡りになった場合の処理

手形の支払期日に手形代金の決済ができなくなることを手形の不渡りといいます。
受取手形が不渡りになったときは、受取手形を不渡手形(資産)に振替えます。手形が不渡になっても、代金を請求する権利(償還請求権)は残るためです。

事例1
○○商会受取手形3万円が不渡りとなった。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 30,00円 受取手形 30,00円 ○○商会9/30期日不渡


◆裏書手形が不渡りとなった場合の処理

(1)直接減額法(一般的で簡易な処理法)
 
事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 受取手形 50,000円 裏書譲渡 ○○商会
6/30期日

事例1
6/30○○商会の裏書手形5万円が不渡りになり△△工業へ代金5万円を現金で支払った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 50,000円 現金 50,000円 不渡手形○○商会6/30期日


(2)評価勘定法
 
事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 裏書手形 50,000円 裏書譲渡 ○○商会6/30期日

事例1
6/30○○商会の裏書手形5万円が不渡りになり△△工業へ代金5万円を現金で支払った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 50,000円 受取手形 50,000円 不渡手形○○商会6/30期日
裏書手形 50,000円 現金 50,000円 △△工業へ支払


(3)対照勘定法
 
事例1
○○商会からの受取手形5万円(期日6/30)を△△工業への買掛金支払として裏書譲渡した。
借   方 貸   方 摘   要
買掛金 50,000円 受取手形 50,000円 裏書譲渡○○商会6/30期日
手形裏書義務見返 50,000円 手形裏書義務 50,000円 裏書譲渡○○商会6/30期日

事例1
6/30○○商会の裏書手形5万円が不渡りになり△△工業へ代金5万円を現金で支払った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 50,000円 現金 50,000円 不渡手形○○商会6/30期日
手形裏書義務 50,000円 手形裏書義務見返 50,000円 裏書譲渡○○商会6/30期日



◆割引手形が不渡りとなった場合の処理

(1)直接減額法(一般的で簡易な処理法)
 
事例1
○○商会からの受取手形8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金79,600円が当座預金に入金された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 受取手形 80,000円 割引 ○○商会9/30期日
支払利息割引料 400円     割引料

事例1
9/30○○商会の割引手形8万円が不渡りになり、銀行に対し現金で買戻しを行った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 50,000円 現金 50,000円 不渡手形○○商会6/30期日


(2)評価勘定法
 
事例1
○○商会からの受取手形8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金79,600円が当座預金に入金された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 割引手形 80,000円 割引 ○○商会9/30期日 
支払利息割引料 400円     割引料

事例1
9/30○○商会の割引手形8万円が不渡りになり、銀行に対し現金で買戻しを行った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 50,000円 受取手形 50,000円 不渡手形○○商会9/30期日
割引手形 50,000円 現金 50,000円 不渡手形○○商会9/30期日


(3)対照勘定法
 
事例1
○○商会からの受取手形8万円(期日9/30)を銀行で割引し、割引料400円を控除した残金79,600円が当座預金に入金された。
借   方 貸   方 摘   要
当座預金 79,600円 受取手形 80,000円 割引 ○○商会9/30期日
支払利息割引料 400円     割引料
手形割引義務見返 80,000円 手形割引義務 80,000円 割引 ○○商会9/30期日

事例1
9/30○○商会の割引手形8万円が不渡りになり、銀行に対し現金で買戻しを行った。
借   方 貸   方 摘   要
不渡手形 80,000円 現金 80,000円 不渡手形○○商会6/30期日
手形割引義務 80,000円 手形割引義務見返 80,000円 裏書譲渡○○商会6/30期日

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