Management Column中小企業のデジタル化とAI導入の進展

1.中小企業の4割超がデジタル化に積極姿勢~支援ニーズは確実に拡大
日本政策金融公庫が実施した「デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査」によると、中小企業の43.6%がデジタル化に積極的に取り組んでいると回答しており、会計事務所が支援すべき企業の裾野は着実に広がっています。
特に従業員数の多い企業ほどデジタル化への関心が高く、自計化・クラウド会計を導入する企業も年々増加しています。この傾向は、会計事務所が単なる記帳業務の代行から、IT導入支援・経営アドバイザーの役割へ転換するタイミングにあることを示しています。
■現在のデジタル化への取り組み方針(従業員規模別・業種別)

2.AI導入が中小企業に急速に広がる~会計事務所が橋渡し役に
導入済みデジタルツールの上位は「ホームページ・SNS」「会計システム」「Web会議システム」でしたが、今後の導入予定で最も注目されているのがAI(人工知能)であり、17.8%の企業が導入を予定しています。
AI導入による成果としては「業務の効率化」が81.9%と突出しており、次いで「人手不足の解消」(21.1%)、「既存事業・サービスの品質向上」(18.4%)、「新事業・サービスの創出」(17.7%)など、業務改善から事業革新にまで多面的な効果が確認されています。意思決定の迅速化やビジネスモデルの変革など、経営戦略面での波及も見られます。
これらは企業の業務設計や財務体制の見直し支援が求められる領域であり、AIツールの活用や業務最適化について会計事務所が支援できる余地が広がっていることを意味します。
■デジタルツールの導入状況

3.デジタル化の相談先、第二位は「税理士・会計士」
中小企業の55.9%がデジタル化にあたって何らかの相談を行っており、相談相手として最も多かったのが「ITベンダー」(50.5%)で、次いで「税理士・公認会計士」(32.8%)、「自社内の役員・従業員」(27.7%)が続きます。
相談内容としては「自社に合ったデジタルツールの選び方」「既存システムからの移行支援」「ツールの活用による業務改善」など、財務・業務両面にわたる実務的な課題が中心です。
会計事務所はまさにこのニーズに応える最も身近で信頼できる専門家として期待されているのです。
■デジタル化の相談相手

4.投資金額から見える「支援対象」としての見極めポイント
2024年度のデジタル化への平均投資額は586.5万円に達し、「100万~1,000万円未満」の企業が最も多くなっています。この数字は、中小企業がもはや業務改善の一環としてではなく、「将来への投資」としてデジタル化を捉えていることを示しています。
今後5年間の見通しでは、「積極的にデジタル投資を続ける」との回答が48.3%にのぼり、すでに取り組みを始めている企業ほど継続姿勢が強い傾向にあります。
■2024年度において、デジタル化を推進するために投じた金額
(従業員規模別・業種別)

中小企業のデジタル化とAI導入は今後さらに進展し、単なる業務改善から経営変革のレベルへと移行しています。
こうした変化に対して、会計事務所には以下のような支援が期待されおり、中小企業のパートナーとして、会計・税務の枠を超えた支援を提供できる体制づくりが今、求められています。
- IT導入の初期相談・ツール選定支援
- クラウド会計・AIツールの活用支援
- 補助金・税制の専門的アドバイス
- 経営改善・資金繰りと連動した中長期の経営支援
■参考資料【厚生労働省】
デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査結果(日本政策金融公庫)