Management Column副業・兼業の普及と税務管理の必要性

副業とは、本業の仕事以外に収入を得る活動全般を指します。近年、働き方改革の進展により注目されている働き方の一つです。それに伴い、会計事務所としても副業に関連する税務管理のサポートが求められる場面が増えています。
では、副業や兼業をしている場合、税務管理をどのように行えばよいのでしょうか?
本コラムでは、副業を行っている場合の税務管理のポイントを解説し、会計事務所が顧問先に対して提供できるアドバイスについて紹介します。
1.所得の種類
副業や兼業をしている場合、主に確定申告を通じて、得た所得を申告する必要があります。会社員であっても、副業による収入があれば、その収入を合算して税務申告を行わなければなりません。
副業が年間20万円を超える場合、確定申告をする義務があります。
副業の所得は、それぞれに税務上の取り扱いが異なるため、自身の副業がどの区分に該当するか正しく把握することが重要です。会計事務所としては、これらの所得を正確に分類し、適切な税務処理を提供することが求められます。
- ●給与所得
- アルバイトやパートタイムなど、企業に雇用される形で得られる所得です。雇用契約に基づいて労務を提供し、その対価として給与を受け取る形態を指します。
- ●事業所得
- 個人事業主として事業活動を行い得られる所得です。例えば、フリーランスとしてのコンサルティング業務や、ネットショップの運営などが該当します。継続的に事業として行われ、帳簿をつけて営利性が認められる活動から得られる収入が該当します。
- ●不動産所得
- アパートやマンションなどの不動産を賃貸して得られる所得です。副業として不動産投資を行い、家賃収入を得る場合がこれに該当します
- ●雑所得
- 上記を含む他の9種類の所得区分に該当しない所得です。例えば、個人で行う講演料や原稿料、インターネットを通じた副業での収入などが該当します。また、事業的な規模に至らない小規模な副業からの収入も、雑所得として扱われることが一般的です。
2.副業の住民税と所得税の申告
副業で収入を得た場合、その所得に対して確定申告が必要になります。これは、所得税が自己申告を原則としているためです。
副業収入があリ、本業の給与所得で年末調整を受けている方は多いでしょう。しかし、年末調整は給与所得のみを対象とした制度であり、給与所得以外の副業による収入は対象外となります。
所得が20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。所得税の確定申告をしている場合は住民税も自動計算されますが、確定申告をしない場合は別途住民税の申告が必要になるため、注意が必要です。また、住民税の申告を忘れると延滞税(年14.6%)が課せられる可能性があるため、必ず期限内に申告を行うことが大切です。
確定申告時には、各種控除(基礎控除、配偶者控除など)の活用や経費の管理が重要です。所得税は収入から経費を差し引いた所得に対して課税されるため、経費を適切に計上することで節税につながります。ただし、経費として認められるのは業務に直接必要な支出のみです。領収書は必ず保管し、帳簿をつけて経費を管理することをお勧めします。
このような経費管理は、確定申告時の証拠書類としても重要です。
3.社会保険の取り扱い
副業をしている場合、社会保険に関しても注意が必要です。
例えば、正社員として健康保険や年金に加入している場合、副業の収入が一定額を超えると、国民健康保険や国民年金に加入する必要が生じることがあります。副業の収入が増えることで、社会保険の適用範囲や保険料の支払い義務が変わることもあります。
- ●社会保険料が増えるケース
- 【アルバイト・パートでの副業】
- ・週20時間以上勤務する場合、新たに社会保険料の負担が発生します
- 【法人設立での副業】
- ・1人法人でも代表者として報酬を受け取る場合は加入が必須となります
- ・本業の給与と役員報酬の合計で保険料が計算されます
- ・従業員を雇用する場合は事業主負担も必要になります
- ●社会保険料が増えないケース
- 【アルバイト・パートでの副業】
- ・週20時間未満の勤務
- 【個人投資での副業】
- ・FXや株式投資などは雇用関係がないため、新たな保険料は不要となります
- 【個人事業主としての副業】
- ・従業員を雇用しない場合、原則として本人の保険料負担は不要です
- ●留意点
- ・複数の事業所で働く場合、主たる事業所の選択と届出が必要です
- ・加入要件を満たす場合の未加入は、後日高額な追納が必要になる可能性があります
- ・保険料は各事業所の報酬に応じて按分計算されます
副業形態によって社会保険料の取り扱いは大きく異なります。副業を選択する際は、これらのコストを考慮した判断が重要になるため、会計事務所としては、社会保険の適用状況や保険料の算定についてもアドバイスを行い、顧客が対応できるようサポートすることが望まれます。
4.会計事務所としてのサポート
- ●副業で会計事務所に相談にくる顧客とは?
- [確定申告の負担を軽減したい]
- 副業を行う会社員にとって、確定申告にかかる作業は大きな負担となります。日々の収支記録、領収書の管理、申告書類の作成など、年間を通じて継続的な事務作業が必要です。
特に会社員として働きながら副業をされている方は、確定申告の作業に充てる時間を確保することが難しい場合があります。そのため、確定申告を依頼することで専門家のサポートを受けながら、自身の時間を効率的に活用したいと考えられます。 - [節税対策を行いたい]
- 副業での節税対策は、正しい知識と適切な方法で行うことが重要です。安易な節税対策は、税務調査のリスクを高め、結果的に追徴課税や加算税の支払いが必要になる可能性があります。
専門家のサポートを受けることで、経費計上の指導、所得区分の判断、確定申告書類の作成支援、税務調査対策のアドバイスなど、税務上のリスクを最小限に抑えることができます。
副業や兼業が普及する現代において、税務管理はますます重要になる事でしょう。
会計事務所は、副収入を得ている顧問先に対して、適切な税務アドバイスを行い、確定申告や納税のサポートを通じて、顧客が法的に問題なく副業を続けられるようサポートすることが求められます。
■参考資料
・厚生労働省ホームページ「副業・兼業」・日本年金機構「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ(リーフレット)」