Management Column著作権リスクと『未管理著作物裁定制度』の活用法

SNS発信やWebマーケティングが不可欠な現代、最も警戒すべきは「ネットにあるから」「少しの引用だから」という発信する側の甘い認識です。
プロ・アマ問わず他者の創作物にはすべて著作権があり、無断利用は重大なコンプライアンス違反となります。現場の軽い気持ちが、企業のブランドイメージを一瞬で失墜させ、巨額の損害賠償や法的トラブルに直結するケースがあります。
一方で権利者不明のため利用を諦めていた作品を、国を介して安全・適法に自社ビジネスへ活用できる新システム「未管理著作物裁定制度」が2026年4月に始動しました。今回は経営者が今知るべき著作権について解説します。
1.「著作権」とは?
著作権とは、マンガ、イラスト、写真、音楽、文章など、自分の考えや感情を創作的に表現した作品を、ほかの人に無断で利用されない権利のことです。
■誰にでも発生する権利
プロ・アマチュアを問わず作品が作られた時点で自動的に発生します。そのため、個人のブログ記事やSNSのイラストにも著作権はあります。
■原則は「事前の許可」が必要
他人の著作物をインターネットに投稿したり、アイコンにしたりと、無断で複製・利用することは基本的に著作権侵害にあたります。そのため、利用したいときは「権利者に事前に許可を得る」のが大原則です。
■著作権に該当しないもの
これらに該当する場合は、そもそも許可なく利用できます。
| ありふれた表現 |
単なる「事実」や「データ」、「アイデア」、ありふれた表現などは著作物ではないため、許可なく利用可能です。 |
|---|---|
| 保護対象外 |
法律や国・地方公共団体の通達、裁判所の判決などは著作権の保護対象外です。 |
| 保護期間の確認 |
著作権の保護期間は原則として「著作者の死後70年」までです。期間が満了した古い作品は許可なく利用できます。 |
■著作権侵害の「重い刑事罰」
著作権侵害は単なる民事上のトラブルにとどまらず、犯罪行為として刑事罰の対象になります。
そのため、「これくらい大丈夫だろう」という軽い認識が、企業に致命的な打撃を与える可能性があるため、厳格な管理が不可欠です。
| 個人の場合 | 10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。 |
|---|---|
| 法人の場合 | 従業員が業務で侵害行為を行った場合、行為者個人だけでなく、会社に対して最高3億円の罰金が科されます。 |
2.許可を取りたくても取れない!を解決する「未管理著作物裁定制度」
世の中には「使いたいけれど、作者が誰だかわからない」「連絡先がどこにも書いておらず、許可が取れない」という作品もたくさんあります。 これまでは利用を諦めるしかありませんでしたが、そうした場面で活用できるのが「未管理著作物裁定制度」です。 この制度は、作品を使いたい人の「きちんと許可を取り、対価を支払って使いたい」という思いと、権利者の権利保護を両立させるために作られました。文化庁長官の決定を得ることで、権利者の許可が直接取れなくても、国が定めた手続きを経て適法に作品を利用できるようになります。
■制度の対象となる作品とは?
すべての「連絡が取れない作品」に使えるわけではありません。対象となるのは以下の要件を満たすものです。
- ●管理事業者に管理されていない
- 著作権の管理団体などに登録されていないこと。
- ●権利者の意思が不明である
- 「無断転載禁止」や「営利目的以外は自由」など、利用に関するルールが作品の周辺(ウェブサイトや書籍の巻末など)に表示されていないこと。
- ●事前の確認を行っている
- ネット検索や文化庁のシステムでの確認、あるいは判明している連絡先へ問い合わせても14日間応答がない状態であること。
■未管理著作物裁定制度の対象かを確認する4つのステップ
■探索方法(一例)
| 著作物等の周辺の確認 |
書籍の巻末やパッケージ、動画の冒頭・末尾。 投稿サイト・SNSのプロフィール欄などを確認します。 |
|---|---|
| インターネット検索 |
インターネット上の検索サービス等による権利者のウェブサイト等を確認します。 |
| 分野横断権利情報 検索システム |
文化庁の分野横断権利情報検索システムで検索・確認 |
■申請から利用開始までの流れ
- ①登録確認機関へ申請
- 利用希望者は、文化庁の登録を受けた登録確認機関である公益社団法人著作権情報センターへ裁定の申請を行います。この手続を進めるためには、指定の申請書と手数料が必要となります。
- ②審査と補償金額の決定
- 申請を受理した後、登録確認機関と文化庁による審査が行われ、補償金額の決定がなされます。利用希望者は事前に文化庁の「裁定補償金額シミュレーションシステム」を使って補償金額の目安を把握することも可能です。
- ③補償金の支払いと利用開始
- 裁定が下りた後、利用希望者は補償金を支払うことで、著作物の利用を開始できます。 利用開始後、文化庁は裁定の結果と著作物に関する情報を「裁定実績オンライン検索データベース」に公開し、一般に周知します。
3.利用の制限期間と権利者保護の仕組み
■利用は最長3年間
期限を過ぎてさらに使いたい場合は、再度申請が必要です。
■権利者が現れたら利用停止になることも
制度を利用しても権利者の権利がなくなるわけではありません。のちに権利者が判明し、その権利者から「使わないでほしい」と文化庁に裁定取消しの請求があった場合、利用を停止する必要があります。その後、直接交渉して許可をもらえば継続可能です。
■作品が利用されていることに気付いたら
自分の作品がこの制度で使われていることに気づいた権利者は、支払われた補償金を受け取ることができます。
4.利用の制限期間と権利者保護の仕組み
著作権コンプライアンスの徹底は、企業の社会的信用を守るための最優先課題です。「知らなかった」では済まされない時代だからこそ、経営層が率先して現場の意識改革を行い、法務リスクを未然に防ぐガバナンス体制を構築することが求められます。
その一方で、新設された「未管理著作物裁定制度」を正しく理解し活用することは、これまで諦めていた優れたコンテンツを適法にビジネスへ取り込み、新たな提供価値を創出する有益な選択肢となります。この双方を守ることが、企業で求められるリスクマネジメントの一つです。自社の知財ガバナンスを今一度見直し、安心・安全な情報発信をすることが、さらなる企業の成長とブランド価値の向上に繋がるでしょう。
■参考資料
[政府広報オンライン]
「著作権者が分からない作品、使っても大丈夫?許可が取れないときの解決策は?」「ネット上の著作権トラブル 正しい知識で回避しよう」
[文化庁]
「令和8年度著作権テキスト」「未管理著作物裁定制度について」
