Management Column持続可能な経営の未来を切り開く先進企業(SX銘柄2025)

「SX銘柄2025」は、日本企業の持続可能な成長を促す価値創造経営の実践事例として注目される企業群を選定し、その取組や戦略を通じて企業価値の向上を目指しています。本レポートでは選定企業の分析結果を紹介します。
1.SX銘柄2025の背景と目的
SX銘柄2025は、日本企業における持続可能な成長の実現を目指すプロジェクトであり、企業価値を向上させるための戦略的な取り組みを評価しています。特に注目されるのは、企業の社会的課題への対応、投資家との建設的な対話、そして長期的な価値創造のプロセスです。
これらの企業は、サステナビリティと社会貢献を意識した経営を通じて、社会的責任を果たしつつ競争優位性を高めています。
この選定基準には、企業理念に基づく長期的な戦略、実行可能な戦略計画、KPIとガバナンス体制の整備、そして投資家とのエンゲージメントが含まれています。SX銘柄2025は、これらの要素をしっかりと実行に移し、持続的な成長を目指す企業を評価するものです。
■SX銘柄の選定

- ◆SX銘柄2025選定企業(五十音順)
- 株式会社アシックス、味の素株式会社*、KDDI株式会社*、ソフトバンク株式会社、第一三共株式会社*、ダイキン工業株式会社*、TDK株式会社、株式会社ニチレイ、パーソルホールディングス株式会社、株式会社ブリヂストン*、明治ホールディングス株式会社*、株式会社良品計画、株式会社レゾナック・ホールディングス
- *:SX銘柄2024、SX銘柄2025連続選定企業
注:選定企業は2025年5月14日時点の情報となります。 - ◆SX注目企業2025
- 今年は新たに「SX銘柄2025」に選定されていない企業から、優れた取組を実施している企業について、「SX注目企業」として以下の2社を選定。
テクノプロ・ホールディングス株式会社、TOTO株式会社
2.企業の価値観と長期戦略の取り組み
SX銘柄2025に選定された企業は、長期的な視点での戦略策定に注力しており、特にバックキャスティング(将来のビジョンを逆算して現在の戦略を構築する手法)を活用しています。これにより、社会的責任と企業成長を調和させる戦略が実現されています。
例えば、味の素株式会社は「「アミノサイエンス🄬」を中心に、ヘルスケアやウェルビーイングを促進する事業領域を展開しており、環境負荷削減と社会貢献を長期的な目標として掲げています。
また、TDK株式会社は、コアコンピタンスである技術を活用し、社会価値を創出するための戦略を明確にしています。これらの企業は、短期的な利益追求にとどまらず、長期的な企業価値向上に向けた戦略を展開しています。
■長期ビジョンを実現するTDKの価値創造プロセス

TDK株式会社のHPより
3.実行戦略と企業価値創造の実績
SX銘柄2025の選定企業は、実行戦略の確立とその進捗をKPIとして明確に示しています。これにより、企業は持続的な成長を実現し、投資家との信頼を構築しています。
例えば、ソフトバンク株式会社は「BeyondCarrier」を成長戦略として掲げ、通信事業の枠を超えた多様な事業領域への進出を目指しています。
また、第一三共株式会社はがん領域(オンコロジー)を成長戦略の柱に据え、グローバル化や専門人材の育成を進め、革新的な医薬品創出を軸に社会的課題解決に貢献しています。
これらの企業は、業界の変化に柔軟に対応し、進化する市場において価値創造を進めています。また、知的財産や人的資本への投資も強化しており、革新的な技術開発を支える基盤を作り上げています。
■第一三共株式会社の価値創造ストーリー

4.実質的な対話と投資家とのエンゲージメント
SX銘柄2025に選定された企業は、投資家との実質的な対話を通じて、戦略の進捗やKPIの達成状況を明確に伝え、信頼関係を構築しています。これにより、企業はより透明で効率的なガバナンスを実現し、投資家からの評価を高めています。 特に、KDDI株式会社は、パートナリングが価値創出・持続的成長のキーポイントとして双方向の対話を強化し、対話内容を経営戦略に反映させる仕組みを整備しています。
また、ダイキン工業株式会社は「気候変動対応」に関連する指標を非財務KPIとして設定し、サステナビリティ経営においても積極的に対話を進めています。
これらの企業は、企業価値創造を促進するために、投資家との建設的な対話を不可欠な要素として位置付けています。
■参考資料
「SX銘柄2025」「SX注目企業2025」を選定しました【経済産業省】