Management Column2026年全面施行!改正物流効率化法で現場はどう変わる?

ネットで注文した商品が翌日に届く、スーパーに行けば新鮮な食材が並んでいる。私たちが当たり前のように享受している生活が今、大きな岐路に立たされています。背景にあるのは、深刻なトラックドライバー不足です。このままでは「モノが運べなくなる」という社会的な危機に対し、国が打ち出した解決策が「改正物流効率化法」です。この法律が目指しているのは「みんなで協力して物流のムダをなくし、持続可能な仕組みを作る」事です。
本コラムでは、私たちのビジネスや暮らしにこの法律がどう関わってくるのか、その全体像を解説します。
1.物流効率化法とは?
2024年の改正で「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」に変更されました。
物流効率化法は、日本の物流インフラを持続可能なものにするために制定された法律です。
近年、EC市場の拡大による荷物の増加や、トラックドライバーの労働規制強化(2024年問題)に伴う深刻な人手不足が課題となっています。これに対応するため、荷主・物流事業者の双方に対して対策が義務付けられました。
2.2025年度施行すべての荷主・物流事業者の「努力義務」
これまでの法律や効率化の取り組みは、主にトラック運送会社などの「物流事業者」が中心でした。2025年度からは、規模の大小を問わず、すべての荷主・物流事業者に対して物流効率化のための措置を講じる努力義務が課せられました。
■対象者
| 荷主(第一種・第二種) |
発荷主、および着荷主 |
|---|---|
| 連鎖化事業者 | フランチャイズチェーンの本部 |
| 貨物自動車運送事業者等 | トラック運送事業者など |
| 貨物自動車関連事業者 | トラックと貨物の受渡しを行う倉庫業者、港湾・航空・鉄道の運送事業者など |
■主な取組内容(努力義務)
| 積載効率の向上 | 1回の運送での積載量の増加、複数荷主による共同配送(積み合わせ)、納品日の集約など。 |
|---|---|
| 荷待ち時間の短縮 | ドライバーの待ち時間を減らすため、積み下ろしが始まるまでの待機時間を短縮するトラック予約受付システムの導入や混雑を回避した日時設定など。 |
| 荷役等時間の短縮 | 荷積み、荷下ろし作業そのものの時間を短縮するパレットの標準化、輸送用器具やタグの導入による検品の効率化、事前出荷情報の活用など。 |
| 実効性の確保 | 社内責任者の選任、教育体制の構築、物流データの標準化や関係事業者間の連携。 |
■国の指導・調査
国はこれらの取組状況に関して指導や助言を行います。また、定期的なアンケートや主要荷主への調査を行い、取組状況を点数化して公表します。
年間を通じて、その事業者が管理する倉庫に入庫されたすべての貨物の合計重量。悪質な事例に対してはヒアリングやトラック・物流Gメン、公正取引委員会等による働きかけや要請を行います。
3.2026年度施行すべての荷主・物流事業者の「義務」
2026年度からは、取扱貨物量や保有車両数が一定規模以上の事業者が「特定事業者」に指定され、より厳格な義務と規制的措置が課せられます。
■特定第一種荷主
自ら運送契約を結んで貨物を輸送させる荷主が対象。
| 指定基準値 | 年間の貨物取扱量: 9万トン以上 |
|---|---|
| 算定の基準 | 自らが貨物自動車運送事業者(トラック会社等)と直接運送契約を締結して輸送させた貨物の年間合計重量。 |
■特定第二種荷主
他者が結んだ運送契約による輸送、または自社トラック(白ナンバー)などを用いて貨物の受渡しを行う荷主(発荷主・着荷主)が対象です。
| 指定基準値 | 年間の貨物取扱量: 9万トン以上 |
|---|---|
| 算定の基準 | 第一種荷主が手配した運送を利用して、自らが貨物の受渡し(出荷・納品)を行った貨物の年間合計重量。 |
■特定連鎖化事業者(フランチャイズ本部)
コンビニや外食チェーンなど、約款や契約で加盟店に対して物流の指示や経営指導を行う本部が対象です。
| 指定基準値 | 年間の貨物取扱量: 9万トン以上 |
|---|---|
| 算定の基準 | チェーンの加盟店(店舗)全体が受渡しを行った貨物の年間合計重量。 |
■特定貨物自動車運送事業者等(トラック事業者等)
実運送を行うトラック運送事業者や、貨物利用運送事業者が対象です。
| 指定基準値 | 保有車両台数:150台以上 |
|---|---|
| 算定の基準 | 毎年度の事業年度末日において、事業用に保有・登録している自動車(トラック等)の合計台数。 |
■特定倉庫業者
貨物の保管や、トラック等への受渡し(荷役)を行う倉庫業者が対象です。
| 指定基準値 | 年間の貨物取扱量: 70万トン以上 |
|---|---|
| 算定の基準 | 年間を通じて、その事業者が管理する倉庫に入庫されたすべての貨物の合計重量。 |
■第一種と第二種の両方がある場合
荷主企業において、自ら運送を手配する分(第一種)と、相手方が手配した運送で受け取る分(第二種)の両方がある場合、合算して9万トンではなく、それぞれの区分で独立して「9万トン」を判定します。ただし、どちらか一方でも基準を超えた場合は、その区分において「特定事業者」に指定されます。
4.特定事業者に課せられる「3つの義務」
特定事業者に指定された場合、以下の対応が必須となります。
- ■中長期計画の作成
- 国の判断基準を踏まえ、物流効率化の措置をどのように実施するかの中長期的な計画を作成・提出する義務。
- ■定期報告
- 「努力義務」に対する実施状況について、毎年度、国に報告する義務。
- ■物流統括管理者(CLO)の選任
- 事業運営上の重要な決定に参画する役員等の「経営幹部」から、物流統括管理者(CLO)を選任する義務。 CLOは、ドライバーの負荷低減や事業管理体制の整備といった方針作成を主導します。
5.義務に違反した場合のペナルティ
取組状況が著しく不十分な場合、国から「勧告」を受けます。勧告に従わない場合はその旨が「公表」され、正当な理由なく改善されない場合は「命令」へと移行します。
■命令違反に対する「罰則」
国からの「命令」に違反した場合、法的なペナルティとして100万円以下の罰金が科せられます。
6.企業に求められる姿勢
改正物流効率化法は、単なる物流現場の改善を求めるものではありません。
荷主企業にとっては、サプライチェーン全体(開発・生産・営業・調達)の連携を強め、物流を「経営課題」として捉えて取り組むことが強く求められています。
物流の効率化を進めることは、コンプライアンスの観点だけでなく、自社の荷物を安定して運び続け、ビジネスを持続させるための必須戦略となっています。
■参考資料
[「物流効率化法」理解促進ポータルサイト]
「物流の持続的な成長を図るため物流効率化法を改正しました「5分でわかる物流効率化法の改正のポイント」
[経済産業省]
「物流効率化法について」