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Management Column「働きながら治す」を当たり前に!
治療と就業の両立支援に求められる努力義務

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深刻な少子高齢化と人口減少に直面する我が国において、一人一人が、心身の健康を保ちながらその能力を最大限に発揮できる職場環境が求められています。
かつては「不治の病」とされたがん等の疾病も、医療技術の進歩により「長く付き合う病気」へと変化しました。しかし、現状では職場の理解や支援体制が不十分なために、適切な治療を受けられなかったり、志半ばで離職を選ばざるを得なかったりするケースが後を絶ちません。
こうした背景を受け、2026年4月1日より、改正労働施策総合推進法に基づき、職場における「治療と就業の両立支援」の取組が事業主の努力義務となります。
本コラムでは、企業が具体的にどのような体制を整え、どのように産業保健スタッフや医療機関と連携していくべきかを解説していきます。

1.両立するにはどのような環境整備が必要か?

■組織としての「基本方針」の表明と周知
事業主が、両立支援に取り組む姿勢を示すことから始まります。

方針の策定 衛生委員会等で調査審議を行い、基本方針や対応方法などを含めた事業場内ルールを作成します。
周知と環境 作成したルールを全従業員に周知します。本人だけでなく、全ての労働者に共有することで、抵抗なく支援を受け入れやすい環境にします。

■意識啓発と相談窓口の設置
全ての労働者や管理職に対し、研修を通じて両立支援への知識と理解を深める必要があります。

研修の実施 全従業員および管理職に対し、両立支援に関する研修を行い、正しい知識と理解を深めます。
窓口の明確化 プライバシーが守られる相談窓口を明示し、情報の取り扱いを徹底することで、労働者が安心して申し出られる環境を作ります。

■両立を可能にする「柔軟な勤務・休暇制度」の導入
治療には「通院時間の確保」や「体調への配慮」が不可欠です。各事業場の実情に応じ、以下のような制度の導入が望まれます。

【区分】 【主な制度内容】
休暇制度 ・時間単位の年休(1時間単位での通院が可能に)
・傷病・病気休暇(法定外の専用休暇)
勤務制度 ・時差出勤(ラッシュ回避)
・短時間勤務、在宅勤務(テレワーク)
復帰支援 ・試し出勤制度(本格復帰前のリハビリ出勤により不安を解消)

■対応手順(フロー)と情報共有の仕組みづくり
申出があった際に、誰が何をすべきか事前に準備します。

役割の整理 人事、現場の上司、産業保健スタッフの役割分担をあらかじめ定めます。
書式の整備 主治医に業務内容を伝える書類や、主治医から配慮事項の意見をもらうための書類(様式)を準備し、円滑に連携できるようにします。

■社内外のネットワーク活用
社内だけで解決しようとせず、専門家と連携する体制を築きます。

社内連携 産業医や保健師等の産業保健スタッフと人事労務部門が密に連携します。
社外連携 医療機関のソーシャルワーカー、産業保健総合支援センター、社会保険労務士などの外部専門機関の支援を必要に応じて活用します。

2.両立支援の進め方

「治療と就業の両立支援」を行うためには、労働者本人、主治医、そして企業の三者が連携し、適切なプロセスを踏むことが不可欠です。

■ 1:労働者からの申出と情報収集
両立支援は、労働者本人からの相談・申出から始まります。
申出をした本人は主治医に対し、会社の勤務状況を伝えた上で、「現在の症状」「就業継続の可否」「望ましい就業上の措置(避けるべき作業など)」「治療への配慮(通院時間の確保など)」についての意見書等を依頼し、会社へ提出します。
■ 2:産業医等による意見聴取
事業主は、本人から提出された主治医の意見書を産業医等に提供し、専門的な見地から意見を聴きます。主治医の意見を確認しつつ、実際の職場環境でどのような配慮が可能か、産業医等に判断を仰ぎます。産業医がいない場合は、主治医の情報を直接の参考にします。
■ 3:就業継続の可否と配慮事項の検討
主治医や産業医の意見を勘案し、最終的に事業主が判断を下します。
安易に就業禁止とするのではなく、配置転換や時短勤務などの可能性を検討します。本人の希望を聴き取り、十分な話し合いを通じて了解を得ることが必要です。
■ 4:両立支援プランの作成と実施
就業継続が可能と判断された場合、具体的な支援内容をまとめた「治療と就業の両立支援プラン」を作成します。
■ 5:フォローアップと見直し
治療の経過や副作用の状況によって、必要な配慮は変化します。
・定期的な面談等を通じて状況を確認し、プランの内容を柔軟に更新します。
・病状が悪化した際や再発した際も、事前に定めたルールに基づき、慎重に判断・支援を行います。

■長期休業が必要な場合
入院等で長期に休む場合は、休業前・休業中・職場復帰時の各フェーズでフォローが必要です。

休業前 傷病手当金などの制度説明や、復帰の手順を伝えて不安を取り除きます。
休業中 定期的な連絡を取り、回復状況を確認します。
復帰時 主治医・産業医の意見をもとに「職場復帰支援プラン」を作成し、段階的な復職(試し出勤など)を検討します。
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3.事業者が利用できる支援制度・支援機関

「治療と就業の両立支援」において、事業主がすべてを自社だけで抱え込む必要はありません。国や公的機関では、専門的なアドバイスや費用の助成など、様々な支援メニューを用意しています。


■ 1.活用できる主な「助成金制度」

【制度名】 【概要】 【窓口】
団体経由産業保健活動推進助成金 中小企業等が、事業主団体等を通じて両立支援などの産業保健サービスを受ける際の費用を助成。 労働者健康安全機構
キャリアアップ助成金
(障害者正社員化コース)
障害のある有期雇用労働者等を正規雇用へ転換する場合に助成。 都道府県労働局
障害者介助等助成金 職場復帰などのため、介助者の配置など特別な措置を講じる場合に助成。 高齢・障害・求職者雇用支援機構
職場適応援助者助成金 自社で雇用する障害者に対し、専門の援助者(ジョブコーチ)を配置して支援を行う場合に助成。 高齢・障害・求職者雇用支援機構

■ 2.相談・連携できる「専門支援機関」
実務上の悩みや、労働者との調整が必要な場合は、以下の機関に相談することが推奨されます。

【制度名】 【支援内容】
産業保健総合支援センター
(さんぽセンター)
専門スタッフによる個別相談、制度導入の訪問支援、管理職向け研修、労働者と事業主の間の個別調整支援。 都道府県ごとに設置されており、両立支援の最も身近な専門拠点です。
ハローワーク
(長期療養者就職支援事業)
難病患者等の就労支援に関する事業主向けの助言・情報提供。
がん、糖尿病、肝炎などの疾病を持つ方の就職や就退職の相談を受け付けています。
地域障害者職業センター
障害者就業・生活支援センター
ジョブコーチによる職場適応援助、雇用管理に関するアドバイス。 障害者手帳の有無にかかわらず、疾病による職業上の課題がある場合に相談可能です。
難病相談支援センター 難病特有の配慮事項に関する相談、患者(労働者)と企業の間の調整支援、企業向け啓発イベント。
難病患者が地域で安心して働き続けられるよう支援する拠点です。

4.治療と就業の両立支援は企業として信頼を高める戦略

「治療と就業の両立支援」の努力義務化は、単なる法的対応ではありません。病という困難に直面した従業員が、キャリアを諦めず安心して働き続けられる社会への大きな一歩です。
深刻な人手不足が続く今、この支援に取り組むことは「人材の定着」や「生産性の向上」に直結し、企業としての信頼を高める重要な戦略となります。 さらに「病気になっても、この会社なら大丈夫」。そう確信できる職場づくりは、組織全体のエンゲージメントを高め、持続可能な成長に繋がる可能性にもなります。
最初から完璧な体制を整えるのは容易ではないでしょう。まずは指針に基づき、基本方針を周知し、相談しやすい雰囲気を作ることから目指してみませんか?



■参考資料

[厚生労働省]

「治療と就業の両立支援指針」
「治療と仕事の両立について」
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