Management Column広まるニセ・誤情報。試される情報の『真偽』

SNSは、いつでも好きなタイミングでトレンドや最新情報が得られるツールですが、同時に偽情報の温床にもなり得ます。そのため、災害などの緊急時に不確かな情報の拡散は救助現場を混乱させ、二次被害を生むリスクがあります。
また、生成AIによる精巧な偽画像や動画が登場している現在、情報の正確性を判断する力はかつてないほど重要です。本コラムでは、偽情報に惑わされないための注意点と、私たちが日頃から備えておくべきリテラシーについて解説します。
1.ニセ・誤情報とは?
インターネットやSNSで流れる情報は、必ずしも善意や真実に基づいたものばかりではありません。中には、わざと嘘を流して人を惑わそうとするものや、投稿の表示回数を稼いで金銭的な利益を得ようとするもの、あるいは勘違いによって広まってしまった情報も含まれています。
| 偽情報 | 人を混乱させたり、だましたりするために、意図的・意識的に作られた嘘や虚偽の情報。 |
|---|---|
| 誤情報 | 勘違いや誤解、あるいは古い情報を最新のものだと思い込むなど、悪意はなくとも結果的に拡散されてしまった間違った情報 |
■フェイクニュースとは?
最近では「フェイクニュース」という言葉を耳にすることが増えました。この言葉はデマ、陰謀論、プロパガンダ、AIによるディープフェイクなど、非常に広い意味で使われており、厳密な定義が定まっていません。そのため、本コラムは、意図的な嘘を指す「偽情報」と、間違いを指す「誤情報」という言葉に分けて解説しています。
2.なぜ、偽・誤情報に惑わされてしまうのか?
「自分は騙されない」と思っていても、いつの間にか偽・誤情報の拡散に加担してしまうことがあります。なぜ、これほどまでに不確かな情報は私たちの心を捉え、瞬く間に広がってしまうのでしょうか。そこには、人間の心理を巧みに突く「情報の罠」があります。
■「感情」を揺さぶり「誰かに教えたい」と思わせる仕掛け
偽・誤情報の多くには、人が思わず反応してしまう2つの要素が含まれています。
| 意外性と希少性 (誰かに教えたい!) |
「まだ誰も知らない」「実はこうだった」という意外性のある情報は、他人にいち早く伝えたいという欲求を刺激します。 |
|---|---|
| 感情への訴え (正義感や願望) |
「かわいそう」「許せない」といった激しい感情や、「こうあってほしい」という願望、あるいは「みんなを助けなければ」という正義感に強く訴えかける内容は、冷静な判断力を鈍らせます。 |
■「誰でも騙される」という現実
Innovation Nipponが公開している[日本におけるフェイクニュースの実態と対処策]によると、偽・誤情報の拡散速度は、真実の約6倍にものぼると言われています。驚きや怒りを誘う情報は検証前にシェアされやすく、一度流れると止めるのは困難です。また、偽情報に接した人の約75%が嘘に気づかず、そのうち約3割が拡散したという結果も出ています。
■進化する偽物、「ディープフェイク動画」の脅威
かつては「動画=動かぬ証拠」と言われた時代もありましたが、今はそう言い切ることはできません。近年、生成AI技術を駆使して作られる「ディープフェイク」と呼ばれる偽動画が、私たちの情報環境を大きく変えています。
以前は高度な編集技術が必要だった動画の加工も、現在ではアプリやAIツールがあれば誰でも、短時間で、簡単に行えるため、問題となっています。
3.惑わされないためには?【基本編】
インターネットやSNSで情報に接する際、私たちは常に情報の真偽を見極める必要があります。偽・誤情報に惑わされないための基本的なチェックポイントは4つあります。
- ■情報源はある?
-
・その情報はどこから、いつ発信されたものですか?
・根拠となる情報は、現在も確認できますか?消えてしまっていませんか?
・もし情報源が海外のニュースや論文の場合、その内容をあなた自身で確認・理解できますか? - ■発信者はその分野の専門家?
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・その情報は、専門知識や必要な資格を持った人が、責任を持って発信しているものですか?
・発信者は過去に偽・誤情報を発信したことで批判された経験はありませんか?
・発信者は、その情報に関連する商品やサービスを販売していませんか?(利益相反の可能性) - ■他ではどう言われている?
-
・その情報について、他の人や他のメディアはどのように報じていますか?
・その情報に反論している意見はありませんか?
・別の内容で報じているメディアや、その情報の誤りを指摘しているメディアはありませんか? - ■その画像は本物?
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・臨場感のある画像が添えられているからといって、すぐに「本当」だと判断していませんか?
・その画像を検索エンジンで検索した場合、全く同じ画像がヒットしませんか?
・その画像は、過去に撮影されたもので、今回の出来事とは全く関係ないものではありませんか?
●専門家ですら見解が異なる情報の場合
チェックをしても真偽が分からない情報や、専門家ですら見解が異なる情報も存在します。そのような場合、情報の正確性を判断できないときは、安易にその情報を投稿したり、拡散したりしないことが重要です。
4.偽・誤情報に惑わされないために【実践・応用編】
情報を鵜呑みにせず、冷静に判断するための応用ポイントを紹介します。
- ■「知り合いからの情報」を過信していませんか?
-
私たちは、家族や友人など親しい人からの情報を無条件に信じてしまいがちです。
しかし、その「情報の出所」が信頼できるとは限りません。親しい人からの情報こそ、違和感を覚えたら、慎重に判断する必要があります。 - ■「表やグラフ」の見た目に騙されていませんか?
- 数字やグラフが添えられていると、その情報は一見客観的で正しく見えます。しかし、中には「根拠となるデータの裏付けがまったくない。」「特定の主張に都合が良い数字だけを抽出し、グラフのメモリを操作して強調している。」ようなケースが潜んでいます。 「データがある=真実」と直結させず、 出典元が明記されているか、その数字に矛盾がないかを確認することが大切です。
- ■その情報の「動機」を想像してみる
-
意図的に作られた偽情報には、必ず発信者の「目的」があります。
「この情報が拡散されて得をするのは誰か?逆に損をするのは誰か?」という視点で眺めてみると、隠れた意図が見えてくることがあります。 - ■「ファクトチェック」の結果を活用する
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「ファクトチェック」とは、情報が事実に基づいているかを専門的に検証し公表する活動です。国際認証を受けた団体やメディアが、客観的な根拠をもとに真偽を確かめています。
世の中の情報は「正しいか間違いか」の二択とは限りません。一部の誤りや判定不能なケースも多いため、専門団体は正確性を指数化した「レーティング」を設けています。判断に迷った際は、これら専門的な検証結果を参考にしてみるのもよいでしょう。
| 承認欲求・愉快犯 | 目立ちたい、世の中が混乱する様子を見たい。 |
|---|---|
| 経済的利益 | 衝撃的な内容で閲覧数(アクセス数)を稼ぎ、広告収入を得たい。 |
5.「情報の運び屋」にならないために
私たちは誰もが、偽・誤情報に惑わされる可能性を持っています。
もし、目にした情報が「なんだかよく分からないもの」であったり、あるいは「誰かを深く傷つけ、社会や経済を混乱させてしまう可能性」があるものなら、「拡散しない」という選択が重要です。
デジタル社会を生きる私たち一人ひとりの冷静な判断が、確かな情報が届く安心な社会を作っていくのです。
■参考資料
政府広報オンライン:インターネット上の偽情報や誤情報にご注意!Innovation Nippon 調査研究報告書:日本におけるフェイクニュースの実態と対処策
内閣官房:偽情報にだまされないために
