Management Columnマイナンバーカードの普及と活用の広がり

マイナンバーカードは、2025年7月末時点で国民の約79.2%が保有しており、ここ数年で生活に浸透してきました。マイナポイント事業をきっかけに取得者が増え、すでに多くの国民が日常的に利用できる状態となりました。
2021年10月20日からマイナンバーカードの健康保険証利用が本格運用され、従来の健康保険証の新規発行が2024年12月2日に終了し、今後はマイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」を基本とする運用に移行します。また、マイナンバーカードと運転免許証及び運転経歴証明書の一体化が今年の3月24日から開始されました。
政府の活用推進基本計画によると、今後も活用範囲を広げるとの事で、今回はマイナンバーカードで何ができるのかを解説します。
■マイナンバーカードの申請・交付状況

1.マイナンバーカードでできる事
マイナンバーカードは、単なる身分証明書にとどまらず、暮らしに密着した幅広い行政手続きや生活インフラと結びつく「国民のデジタル基盤」としての役割を担っています。
- ■身分証明書としての利用
- マイナンバーカードは、顔写真付きの公的な身分証明書として利用できます。マイナンバーの提示と本人確認が同時に必要な場合、このカード1枚で対応可能です。
- ■各種証明書のコンビニ取得
- 全国のコンビニエンスストアで、以下の証明書が取得可能です。利用時は4桁の利用者証明用電子証明書の暗証番号が必要です。
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・住民票の写し
・印鑑登録証明書
・課税証明書/非課税証明書
・戸籍関係証明書 - ■健康・医療情報の管理
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・マイナ保険証として医療機関での受診が可能
・診療、薬剤情報の確認
・医療費情報の確認や医療費控除の手続き - ■公金受取口座の登録
- 給付金等を受け取るための預貯金口座を事前に登録できます。これにより、年金、児童手当、所得税還付金などの受け取りが円滑になります。登録した口座情報はマイナポータルで確認でき、いつでも変更や削除が可能です。
- ■行政手続きのオンライン化
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・確定申告に必要な証明書類の一括取得
・年金情報の確認と各種申請
・引越し時の転出届のオンライン申請
・運転免許証との一体化(マイナ免許証) - ■その他の便利な機能
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・図書館カードとしての利用
・パスポート申請手続きでの活用
・各種行政サービスの電子申請
2.今後の活用方針
医療分野では電子処方箋や診療情報の共有が始まりつつあり、患者一人ひとりの情報がよりスムーズに医療機関間でやり取りできる体制づくりが進められています。また介護や福祉サービスにおいても、マイナンバーカードを活用した利用者管理やサービス提供の効率化が期待されています。
民間分野でも利用拡大が視野に入っています。特に金融機関では、口座開設や本人確認(KYC)にマイナンバーカードを利用する動きが強まっており、従来煩雑だった手続きが簡素化されつつあります。電子署名の仕組みを活用すれば、契約書の締結や各種取引も効率的に行えるようになり、今後は企業活動の中でも存在感を増していくでしょう。
- ■医療・福祉分野での統合利用
- 電子処方箋や診療情報の共有、介護や福祉サービス利用の効率化にマイナンバーカードを活用。
- ■民間事業者との連携
- 金融機関やオンラインサービスにおける本人確認手段としての利用拡大。電子署名を活用した契約の効率化も見込まれます。
- ■セキュリティ・利便性の両立
- 生体認証や暗号化技術を活用し、セキュリティを確保しながら利用シーンを広げる方針。
- ■データ連携基盤の構築
- 自治体・医療機関・教育機関といった公的機関に加え、民間事業者とも連携できる仕組みを強化し、社会全体でのデジタルインフラとして定着を目指す。
3.マイナンバーカードの課題
マイナンバーカードの課題は残されています。個人情報保護やセキュリティへの不安は依然として根強く、利用者への説明が欠かせません。また、高齢者やデジタルに不慣れな層が利用しやすい環境整備も重要です。さらに、自治体によって対応スピードに差があることから、地域ごとの格差をどう埋めていくかも今後の課題と言えるでしょう。
- ■利用者の不安解消
- 個人情報保護やセキュリティ面での懸念が根強いため、透明性のある説明や安全性の実証が不可欠。
- ■地域格差の是正
- 自治体ごとの対応速度に差があるため、全国的に均一な利便性の確保が課題。
- ■高齢者・デジタル弱者への支援
- 利用が困難な層に対する支援体制の充実が必要。
4.「普及フェーズ」から「活用フェーズ」へ
マイナンバーカードは普及段階から「本格的な活用フェーズ」へ移行しており、医療、福祉、金融、行政手続きと、活用領域は広がり続けています。マイナンバーカードの活用によって「書かない窓口」「ワンストップ行政」の実現が進みつつあります。また、デジタル庁は、自治体だけでなく民間事業者の利用シーン拡大に向けた取り組みを促進しています。
会計事務所としては、単なる制度の動向把握にとどまらず、顧問先の業務効率化や経営改善の視点から「マイナンバーカードをどう活かすか」を積極的に提案していくことが、今後ますます重要になるでしょう。
■マイナンバーカードの利用シーンの拡大

■参考資料
デジタル庁「マイナンバーカードの利用シーン」デジタル庁「【資料1】マイナンバーカード普及・利活用を進めるために(基本情報)(2025年8月15日更新)
デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画 統合版(令和7年6月13日閣議決定)」
参議院「経済のプリズム 第235号(令和6年3月)「セキュリティ・クリアランス/マイナンバー制度」