5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 医業収入総額の確認
5-6 医業仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 資産との区分が必要となる費用
5-12 交際費とその他周辺科目との区分
5-13 寄付金の取扱い
5-14 個人と法人間での建物貸借時の留意点
5-15 生命保険料
5-16 諸会費の取扱い(旅費・学会費等)
5-17 福利厚生費
5-18 リース料の取扱い
5-19 個人開業医の家事関連費
5-20 個人開業医の特例適用(措置法第26条)
5-21 決算方針書
5-22 決算確認報告書
5-23 決算自己チェック表
5-24 書面添付チェックリスト
5-25 消費税の確認ポイント
5-26 源泉所得税の確認ポイント
1   寄付金の種類

(1)国 地方公共団体に対する寄付金及び財務大臣の指定した寄付金
医療法人においては、この寄付金は国又は地方公共団体への寄附金に該当する。支出した寄付金は、その全額が損金算入となる。これは、資本金を有する医療法人でも財団法人である医療法人でもである。

(2)一般の寄付金
一般の寄付金に関しては、税法上 損金算入限度額計算を行うこととなる。したがって限度を超える金額は経費とならない。

(3)寄附金の計上時期
@ 医療法人が支出した寄付金で、利益または剰余金の処分による経理をしたときは、損金に算入しないこととする。
A 未払金に計上した寄付金は、実際に支出した年度の寄付金として取扱う。
B 仮払金と経理している寄付金も、その実際に支出した年度の寄付金として取扱いをする。
C 手形によって寄付金を支払った場合は、決済された年度の寄付金となる。


2   出身大学や医局に対する寄付金

病医院では、院長などの出身大学や医局に対して寄附をするケースがよくあります。しかし、寄附金は、個人と法人とその取扱いが若干、異なりますので、注意が必要です。また、この時期は、ご子弟の医学部入学に際して発生する寄附金なども出てきます。寄附金の制度を有効に活用するポイントおよび留意点は以下の通りです。
寄附金はその性質上、反対給付がありませんので、原則として必要経費や損金算入とすることはできません。しかし、診療所等の事業を遂行する上で必要な寄附金もあります。そういう場合は、所得税・法人税の負担を不当に軽減させない範囲において、一定の制限を設けて、それぞれ必要経費または損金算入を認めています。
この場合、寄附金とは、税法上、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、金銭その他の資産または経済的利益の贈与、無償の供与のことをいいます。寄附金の額については、金銭の場合は金銭の額、金銭以外の資産の場合は贈与時の価額、経済的利益は供与時の価額とされます(法人税法37条(7)(8))。
支出した金額が寄附金に該当するか否かは、名義の如何にかかわらず、その支出の実態により判断することになります。
 
@ 当医療法人の理事長の出身大学への寄付金
当医療法人の理事長の出身大学で、施設等の拡充を行うことになりました。その後援会に対して負担する寄附金の取り扱いについて。
寄附金は法人税法では、損金算入に一定の限度を設けています。つまり、法人が各事業年度で支出した寄附金のうち、国または地方公共団体に対する寄附金(その寄附によって設けられた施設を寄附した者が専属的に利用できること。その他特別の利益が寄附した者に及ぶと認められる場合を除く)及び指定寄附金については、全額損金算入されます。しかし、一般の寄附金、特定公益増進法人等及び認定特定非営利活動法人に対する寄附金については、一定限度を超える部分の金額は損金の額に算入できません。
国等に対する寄附金とは、直接国等に寄附するものをいいます。国立または公立の学校等に施設の建設または拡張等の目的を持って設立された後援会等に対する寄附金であって、その目的である施設が完成後、遅滞なく国等に帰属することが明らかな場合はその寄附は国等に対する寄附金として取扱われます(基通9-4-3)。しかし、理事長の出身校という理由では、法人役員等が個人として負担すべきものです。したがって、国等に対する寄附であろうと、一般の寄附であろうと、本来負担すべき者に対する「給与」となり、損金算入することはできません(基通9-4-2の2)。
つまり、本件の場合、その支出先が国等に対する寄附金であっても、当該医療法人が当該学校に寄附する業務上の理由がないのであれば、理事長個人が負担すべき寄附金と考えられます(この場合、理事長個人の特定寄附金として確定申告することができます)。
なお、理事長個人が負担すべきか否かは、その法人の業務上、法人が負担することが合理的か否かにより判断することになります。医療法人と大学医学部間に人的な交流などの事業遂行上合理的理由があれば、法人が負担しても問題はないと判断されます。
 
A 町内会や子供会への寄付金
診療所所在地の町内で行われる夏祭りに対する町内会や子供会への寄附について。
必要経費に算入される寄附金とは、事業遂行上直接の必要性に基づくもので、かつ、その支出が実際上拒絶できなかったと認められる部分の金額とされています。
つぎに寄附金控除の対象となる寄附金は、国または地方公共団体に対するもの及び指定寄附金等の特定寄附金に、原則として限定されています。
町内会等への寄附が事業遂行上とくに負担しなければならないものであれば、必要経費になります。
 
B 子女等の学校入学に関してする寄付金
長女の私立医大入学の際の寄附金は、寄附金控除の対象となりうるか。
子女等の「学校入学に関してする寄附金」は特定寄附金には該当せず、寄附金控除を受けることはできません。
この「学校入学に関してする寄附金」は、その寄附が条件とされ、入学との相当因果関係があり、入学願書受付開始から、その入学の日の帰属する年内に行った寄附がすべて含まれます。さらに入学する学校との関連する団体及び入学辞退等を行った場合の寄附も含まれます。「学校入学に関してする寄附金」は、その納入がない限り入学を許されないこととされているものをいいます。


3 寄付金計上時の留意点


(1)寄付金の計上時期
@ 支払の実態を確認する
寄附金は、現実に支払があるまでは寄附金として取り扱わないこととされているのに、未払いの寄附金で未決済のものを損金算入としていた。

(2)国等に対する寄附金の判断
@ 国等に対する採納手続き
地元の公立小学校に、楽器や体育用具を寄附したが採納手続きが行なわれていないため国等に対する寄附金の扱いは受けられない。
A 最終的な行先が国等となる
国等へ採納される手続きをしたものであったが、その寄附金が特定の団体に交付されることになっており、国等に対する寄附金とはならない。
国等に対する寄附金となるものには、領収書に所得税法、法人税法上の取扱いについて記載することになっています。
B 繰延資産となるものについての処理誤りはないか
自院前の市道を、市の同意を得てアスファルト舗装のうえ寄附し、全額損金の額に算入していたが、自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のための支出であり繰延資産となる。

(3)理事長や院長の出身大学への寄附金の処理
理事長、院長などが自分の出身大学へ寄附したものは、事業上の寄附にはなりません。

(4)特定公益増進法人に対する寄附金は
特定の公益増進のための活動を行っている法人へ寄附したものは、別枠で損金が認められる。

(5)寄附金から除かれているものの判断
@ 次のような費用は寄附金から除かれます
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