4-1 月次決算処理のポイント
4-2 月次決算処理の確認
4-3 貸借対照表残高の確認
4-4 損益計算書科目チェック
4-5 営業外収益・費用のチェック
1 損益計算書とは
一定期間における会社の儲けや損失を示す計算書類です。内容に応じて3つの収益、4つの費用、5つの利益に区分し表示します。

3つの収益 保険収入高、自由診療収入、雑収入
4つの費用 売上原価、販売費および一般管理費、営業外費用、特別損失
5つの利益 売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期利益

利益や損失の状況を把握するためには、上記収益・費用が正確に示されていることが重要となります。



2 医業収益
@ 医業収益の計上時期
医業収益は実現主義により認識される。実現主義とは、財貨又は用役を第三者に提供し、その対価の獲得が確定した時点で収益を計上するものである。
医業でいえば、実際にその日の診療行為が終了した時点で収益を計上することとなる。従って未入金となっている場合でも、「窓口未収入金」等の勘定を相手として、収益を計上しなければならないのである。しかし、医療機関によっては現金入金時に収益を計上していることがあり、この場合は期末において窓口未収金管理表等から、未収部分の収益を計上しなければならない。

A 保険診療報酬
病医院の医業収益は、通常、入金経路別に会計処理されています。

窓口収入 社保、国保、自費、その他医業収入、雑収入
振込収入 各種保険別振込収入

保険診療報酬の場合は、保険点数算定がそのまま収益の測定となる。点数算定は個々の診療行為の内容を厚生省が定める点数表(医科及び歯科)と薬価基準に当てはめて計算することになる。この点数1点が10円であり、基本的には診療点数に10円を乗じた金額が保険診療報酬合計となる。

B 自由診療報酬
自由診療報酬のうち労災保険については1点12円、自賠責保険については、地域の医師会と損保会社との協定により1点15円、30円というように定められている。その他の自由診療報酬については、一般に任意であり、保険点数とは関係がない。


3 医業費用
@ 材料費
病院において診療のために使用される医薬品の購入額を計上する勘定科目です。仕入値引き等の独立勘定科目は設定されていませんので、値引き等の処理は医薬品費の貸方科目として考えます。医業収入に対する購入費割合が異常に高くなった場合など、薬品仕入時の納入チェックが厳密に行う必要があります。

薬 品 医薬品の卸売業者の納品書、請求書チェック
材 料 診療材料、歯科材料の納品書、請求書チェック
委託費 検査代、外注技工料

A 期末棚卸
薬品、診療材料、歯科材料、貯蔵品等の棚卸資産の在庫を確認し、診察室や処置室等の場所別に在庫品の量と単価を集計する。

棚卸資産の評価
企業会計原則において原則的基準、低下基準の選択適用をもうけ、その貸借対照表価格の算定のため個別法、先入先出法、後入先出法、平均原価法、売価還元原価法、予定価格または標準原価を適用した原価によることができる。医療機関においては、最終仕入原価報を採用することが多い。

B 給与費
従業員に支給する給料・手当を費用として処理する勘定科目で給与明細などで金額を確認します。
給与支給については

誰が(個人事業者、法人)支給するのか
誰に(役員、使用人、兼務役員、家族従業員)支給するのか
何を(役員報酬、給料、賞与、退職給与、経済的利益)支給するのか

によって、その取扱いが異なってきます。
医師給、看護師給、医療技術員給、事務員給、技能労務給など、職制区分別に管理し、その支給総額が帳簿と一致しているか確認していきます。

C 器機賃借料
固定資産に計上を要しない機器等のリース、レンタル料で毎月一定額が費用として計上されます。リース契約書に基づき指定の口座から自動で引落しするケースが大半です。リースは一旦契約するとリース料は変更されませんので、前月と同額か確認します。

D 地代家賃
土地や建物などの不動産を賃貸したときに費用として処理する科目です。賃貸契約書をもとに毎月一定額の対価を支払う契約になっているため前月と同額か確認します。契約内容で支払時期が明記されていますので、その時期に支払いをしたか、その対価は何月のものかを確認します。

E 修繕費
固定資産について支出した金額は、資本的支出として固定資産に加算される金額と修繕費として必要経費に算入される金額があります。修繕費とは、通常の維持管理及び原状回復のための支出であるかを確認します。

@ 壊れた屋根、窓ガラス等の取替費用
A 地盤沈下した土地の地盛り費用
B 建物、機械装置などの移設移曳費用

F 保険料
生命保険料、病院責任賠償保険料など保険契約に基づく費用で福利厚生費、器機設備保険料、車両関係費に該当するものを除きます。
保険契約内容によって、保険料の損金計上額が相違するため、契約内容を確認します。毎月一定額が計上されているかを確認します。

G 租税公課
印紙税、事業所税などの租税及び町内会費などの賦課金並びに損金不算入の罰金、過料等を費用として処理しているか確認します。定期的な租税は支払い月が決まっていますので、該当月に漏れがないか確認します。

H 交際費
接待及び交際のための費用として処理しているか確認します。交際費として必要経費に算入するためには、

@ 支出されたことが明らかなこと
A 支出の相手、接待の理由からみて専ら事業の遂行上必要と認められるものであること

以上の要件を満たすことが必要です。交際の相手先は、事業について直接的に取引関係があるものだけでなく、間接的に当該法人の利害に関係ある者、医師会や勤務医派遣の依頼先なども含まれるため、目的と実態を把握します。

I 広告宣伝費
病医院の機関紙、広告紙などの印刷製本費または電飾公告あるいは看板広告等の費用を処理しているか確認します。支払方法は、定額月払い、年払いが多く見られますので請求書を確認します。当月においてその終期が1年を超えて到来するものに係る費用は前払い費用とします。
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