6-1 中小企業の会計に関する指針とは?
6-2 金銭債権と貸倒れの要点
6-3 有価証券と棚卸資産の要点
6-4 経過勘定等の要点
6-5 固定資産と繰延資産の要点
6-6 金銭債務と引当金の要点
6-7 税金と税効果会計の要点
6-8 会計指針の要点〜純資産の部
6-9 会計指針の要点〜収益・費用の計上
6-10 会計指針の要点〜その他特殊項目
1   外貨建取引等

要点
  外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換額をもって記録する。
  外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付す。
  外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。)については、決算時の為替相場による円換算額を付す。ただし、長期のもの(1年超のもの)について重要性がない場合には、取得時の為替相場による円換算額を付すことができる。
  外貨建売買目的有価証券、その他有価証券(時価のないものを含む。)及び評価損を計上した有価証券については、時価(その他有価証券のうち時価のないものについては取得原価)を決算時の為替相場により円換算した額を付す。

(1)取引発生時の処理
外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。
 
(2)決算時の処理
外国通貨、外貨建金銭債権債務等の金融商品については、決算時において、原則として、次の処理を行う。




2   組織再編の会計(企業結合会計及び事業分離会計)

要点
  企業結合が行われた場合、結合企業に適用すべき会計処理は、企業結合の会計上の分類に基づき決定される。
会計上の分類は、下記の4つである。
@  取得(一方の会社が他の会社を支配したと認められる企業結合)、
A  持分の結合(いずれの会社も他の会社を支配したとは認められない企業結合)、
B  共同支配企業の形成(共同支配となる企業結合)
C  共通支配下の取引等(親会社と子会社、あるいは子会社と子会社の企業結合などグループ内の組織再編)
  結合企業が被結合企業から受け入れる資産及び負債は、企業結合が取得と判定された場合には時価を付し、それ以外の場合には被結合企業の適正な帳簿価額を付すことになる。時価を付すべき場合にも、一定の要件を満たす場合には、被結合企業の適正な帳簿価額によることができる。
  事業分離が行われた場合、分離元企業に適用すべき会計処理は、分離元企業にとって移転した事業に対する投資が継続しているかどうかに基づき決定される。
  投資が継続している場合(受取対価が株式のみで、その株式が子会社株式又は関連会社株式に該当する場合)には、損益は発生せず、投資が清算された場合(受取対価が現金の場合など)には、原則として、移転損益が発生する。

(1)企業結合会計
企業結合会計の概要
企業結合とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう。企業結合の形式としては、合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転などの組織再編がある。
会計上は、このような組織再編の形式にかかわらず、企業結合の会計上の分類(取得、持分の結合、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等の4つ)に基づき結合企業(吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)に適用すべき会計処理が決定される。したがって、ある企業結合が行われた場合、それがどの企業結合の会計上の分類に該当するのかを識別することが必要になる。
 
(2)事業分離会計
事業分離会計の概要
事業分離とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。事業分離には、会社分割、事業譲渡などの組織再編がある。
会計上は、分離元企業(吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)にとって、移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも清算されたのかにより、適用すべき会計処理が決定される。


3   個別注記表

要点
  会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項に関する注記等の項目に区分して、個別注記表を表示するよう要求されており、かつ、それら以外でも貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならないとしている。したがって、これらの規則に従い注記を行うことが必要である。

(1)会社計算規則の規定
会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項に関する注記等の項目に区分して、個別注記表を表示するよう要求されている。また、それら以外であって、貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならない。なお、個別注記表については、必ず「注記表」という1つの書面として作成しなければならないということではなく、従来どおり貸借対照表などの注記事項として記載することも認められている。
ただし、会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表(@)や会計監査人設置会社以外の公開会社の個別注記表(A)については、以下の表のとおり注記を要しない項目が規定されている。
 
(2)本指針によることの注記
本指針によって計算書類を作成した場合にはその旨を注記する必要がある。
 
(3)本指針によることの注記
役員の個人的な信用が重視される中小企業の特性を考慮して、役員と会社間との取引についても注記事項として開示することが望ましい。


4   決算公告と貸借対照表及び損益計算書並びに
   株主資本等変動計算書の例示


要点
  貸借対照表は公告しなければならない。
  公告方法が官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表に記載され又は記録された情報を電磁的方法により公開することができる。その場合は、その要旨ではなく、貸借対照表そのものを開示する必要がある。

[決算公告]
株式会社は、貸借対照表を公告しなければならない(会社法第440条第1項)。
なお、公告方法が官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表に記載され又は記録された情報を電磁的方法により公開することができる(会社法第440条第3項)。ただし、その場合は、その要旨ではなく、貸借対照表そのものを開示する必要がある。
なお、貸借対照表のみならず、損益計算書も重要な書類であるので、これらに関しても開示を行うことが望ましい。なお、電磁的方法を採用する場合、これらの要旨ではなく、記載又は記録されているものをそのまま公開することとなっている。この方法によれば、あえて要旨を作成する作業又は注記を省略するという作業は必要ないため、事務的な負担が増えることはなく、実務的には要旨の公開よりも容易である。
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