6-1 中小企業の会計に関する指針とは?
6-2 金銭債権と貸倒れの要点
6-3 有価証券と棚卸資産の要点
6-4 経過勘定等の要点
6-5 固定資産と繰延資産の要点
6-6 金銭債務と引当金の要点
6-7 税金と税効果会計の要点
6-8 会計指針の要点〜純資産の部
6-9 会計指針の要点〜収益・費用の計上
6-10 会計指針の要点〜その他特殊項目
1   金銭債務

要点
  金銭債務には、債務額を付す。

(1)金銭債務の定義
金銭債務とは、金銭の支払を目的とする債務をいい、支払手形、買掛金、借入金、社債(私募債を含む。)等を含む。なお、金銭債務は、網羅的に計上する。
 
(2)貸借対照表上の表示
@  営業上の債務
買掛金、支払手形その他営業取引によって生じた金銭債務は、流動負債の部に表示する。
A  営業上の債務以外の債務
借入金その他(1)の金銭債務以外の金銭債務で、事業年度の末日の翌日から起算して1年以内に支払又は返済されると認められるものは、流動負債の部に表示する。
B  関係会社に対する金銭債務
関係会社に対する金銭債務は、次のいずれかの方法により表示する。
イ.その金銭債務が属する項目ごとに、他の金銭債務と区分して表示する。
ロ.その金銭債務が属する項目ごとに、又は2以上の項目について一括して、注記する。
C  その他の債務
上記@及びA以外の金銭債務は、固定負債の部に表示する。


2   引当金

要点
  将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失とし、引当金に繰り入れなければならない。

(1)引当金の設定要件
@  次のすべての要件に該当するものは、引当金として計上しなければならない。
(イ) 将来の特定の費用又は損失であること
(ロ) 発生が当期以前の事象に起因していること
(ハ) 発生の可能性が高いこと
(ニ) 金額を合理的に見積ることができること
A  引当金のうち、当期の負担に属する部分の金額を当期の費用又は損失として計上しなければならない。
 
(2)引当金の区分
 
(3)表示
@  引当金は、その計上の目的を示す適当な名称を付して記載しなければならない。
A  引当金の繰入額は、その引当金の目的等に応じて、損益計算書において、売上高の控除項目、製造原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用として、その内容を示す適当な項目に計上する。


3   退職給付債務・退職給付引当金

要点
  確定給付型退職給付制度(退職一時金制度、厚生年金基金、適格退職年金及び確定給付企業年金)を採用している場合は、原則として簡便的方法である退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法を適用できる。
  中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度及び確定拠出型年金制度を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理する。

(1)退職給付制度
就業規則等の定めに基づく退職一時金、厚生年金基金、適格退職年金及び確定給付企業年金の退職給付制度を採用している会社にあっては、従業員との関係で法的債務を負っていることになるため、引当金の計上が必要となる。
 
(2)確定給付型退職給付債務の会計処理−原則法
退職時に見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を一定の割引率及び予想残存勤務期間に基づいて割引計算した退職給付債務に、未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債(退職給付引当金)として計上する。
 
(3)確定給付型退職給付債務の計算方法−簡便的方法
退職一時金制度の場合、退職給付に係る期末自己都合要支給額をもって退職給付債務とする方法は、会社が自ら計算することができる方法である。確定給付型の企業年金制度であっても、通常、支給実績として従業員が退職時に一時金を選択することが多い。この場合には、退職一時金制度と同様に退職給付債務を計算することができる。
 
(4)特 則
退職給付引当金を計上していない場合、一時に処理することは、財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性が高い。そのため、本指針適用に伴い新たな会計処理の採用により生じる影響額(適用時差異)は、通常の会計処理とは区分して、本指針適用後、10年以内の一定の年数又は従業員の平均残存勤務年数のいずれか短い年数にわたり定額法により費用処理することができる。この場合には未償却の適用時差異の金額を注記する。
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