5-1 決算処理の体系
5-2 各勘定科目の残高確認
5-3 仮勘定科目・経過勘定科目の整理
5-4 有価証券の評価
5-5 売上総額の確認
5-6 仕入総額の確認
5-7 人件費総額の確認
5-8 決算修正取引(棚卸)
5-9 決算修正取引(減価償却)
5-10 決算修正取引(貸倒引当金の計上)
5-11 貸倒損失の計上
5-12 資産との区分が必要となる費用
5-13 交際費とその他周辺科目との区分
5-14 寄付金の取扱い
5-15 役員と法人間での建物貸借時の留意点
5-16 生命保険料
5-17 旅費・日当
5-18 福利厚生費
5-19 リース料の取扱い
5-20 決算確認報告書の記載事項
5-21 決算確認書
5-22 役員業務内容検討書
5-23 書面添付チェックリスト
5-24 消費税の確認ポイント
5-25 消費税申告の注意点
5-26 消費税チェックシート
5-27 源泉所得税の確認ポイント
1   決算確認ポイント

(1)従業員給与

@ 給与総額の確認
(a) 職員名簿、給与台帳、アルバイト給与との突合
給与支給人員と実際に在籍している人数が一致するか、一致しない場合は原因を追及されるため、採用、退職など人の異動はきちんと管理しておき、説明できるようにすることが必要である。
また現金支払に係る領収書に記載されているアルバイト住所を確認したところ、そこには居住していなっかたというような場合、税務署に疑いを持たれます。アルバイトといえども銀行振込にするなど不振に思われないようにすることが大切である。
(b) 社会保険料、源泉税等の処理確認
給与支給明細書と源泉徴収簿が一致しているか、架空、水増し計上などがないか、関連する帳票から確認する。
勤務状況が他の人と同じであるのに、社会保険等の各種届出書の提出のない人や各種の引去りがない人は不自然であり、実際に従事しているか疑いをもたれるため、理由を説明できるようにしておくことが重要。
(c) 通勤交通費、各種手当等の確認

A 未払給与の計上もれの確認

B 架空人件費の有無のチェック
退職した従業員に対し、その後も支給していた例もあり、調査では、状況把握のため従業員に従事状況の確認をすることがあります。
調査では、出勤簿や勤務表と実際に給与支給している社長との確認を行い、名義貸等がないか実態の把握を行います。

(2)役員給与

@ 出資者名簿、登記簿謄本で理事であることを確認する。
A 役員給与に関する規定(議事録)の確認する。
B 代表者の家族に対する報酬が過大でないか確認する。
C 役員給与の期中の改定は、遡及できないこと、継続することを注意する。(利益操作とならないこと)
D みなし役員、使用人兼務役員、役員賞与の取扱いについて確認する。

(3)退職給与

@ 退職給与規定に基づいて支給されているか、確認する。
A 損金の算入時期に誤りはないか確認する。
B 過大な退職給与の取扱いはないか確認する。
C 経理処理に誤りはないか確認する。
D 退職給与を仮払処理していないか確認する。
E 退職の事実を確認する。

(4)現物給与等の観点からの注意点

@
一般に経済的利益とされるものは、以下の通り。
(役員を主体に考えた場合であれば)
無償又は著しく低い価額の対価で、資産を譲り受けた場合、又は役務の提供を受けた場合   → その額が毎月概ね一定しているものは報酬
通常の価格に較べ高い価額の対価で資産を譲渡した場合、又は役務を提供した場合   → 賞与
無利息または低い利率で金銭を借り入れた場合   → 報酬
無償で資産を借り受けた場合   → その額が毎月概ね一定しているものは報酬

A 社宅に係る経済的利益
  社宅については、社宅費は通常の家賃(時価)より安いのが一般的であるが、著しく低い場合にはその部分については給与として課税されることになる。ただし、使用人社宅については形式的な基準として、通常の家賃の半額以上を徴収している場合には給与としての課税はされない。

B 食事代の現物支給
 

従業員等に対する食事代については給与以外の経済的利益であるが、福利厚生的な側面を有しているため、現物給与とされる金額について一定の基準を設けている。次の2要件をいずれも満たす場合には、経済的利益はないものとされ給与課税されない。

  食事代の半額以上を自己負担としている場合
  法人の食事代の負担が月額3,500円以下である場合



2   税務確認ポイント

(1)パートの取扱い
パート職員に対する給与支給額については、経費への計上漏れがないか否かの確認と、支払いの事実を証明するため、受領印か領収書を保管することが必要である。また、タイムレコーダーや、勤務状況を示す現場の下記書類等による勤務実態の確認も必要である。

履歴書と勤務内容の確認
タイムレコーダーや出勤簿の確認
勤務シフト表等による実態確認
従業員間の給与のバランス検討

日額表の乙欄適用となるので要注意
他の職員と同様の日に支給


(2)役員給与の確認
@ 事業年度途中から増額したものの処理確認 [定期同額給与]
  業績が好調なため、当期の後半より役員の給与を月額100万円から120万円に増額したところ増額した20万円部分は定期同額給与に該当しないとして6ヶ月分120万円が損金を否認された。

役員に対する給与の額の改定が、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日より後に行われていることから定期同額給与に該当しません。



A 事前に届出書を提出したものに係る支払確認 [事前確定届出給与]
  役員に対して従業員と同様に、10月に燃料手当を支給したところ、その燃料手当は事前確定届給与に該当しないとして否認された。

予め10月に支給が決まっていたが、事前届出を行なっていなかったため、損金が認められなかったものです。
期限までに届出を行っているか、注意と確認が必要です。


B みなし役員に該当し過大役員給与とならないことの確認
  使用人兼務役員の使用人部分の賞与について、みなし役員に該当することが判明したため過大役員給与として否認されたケースがある。

C 使用人兼務役員の使用人部分の賞与の支給時期確認
  使用人兼務役員の賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期にしたところ、使用人としての職務に対する賞与分の金額が過大役員給与として否認されたケースがある。

D 仕事への従事状況から見て過大な役員給与となるものがないことの確認
  非常勤役員である社長の妻に対する役員給与が、役員としての業務にほとんど従事していない実態から過大役員給与と認定され一部を否認されたケースがある。

(3)役員退職給与の確認
@ 適正な退職金の計算を行って支給していることの確認
  社長の死亡により、保険会社から保険金が支払われたので、その全額を退職金として支給したところ過大であるとして否認されたケースがある。

保険会社から支払われた保険金は退職金そのものではありませんから、役員退職金規定に基づき適正な退職給与の額を計算して決める必要があります。


(4)従業員未払賞与の確認
今期業績が好調だったため、決算賞与を支給することとした。決定した支給総額を期末に未払計上し、2ヶ月後に支払ったが期末未払計上を否認されたケースがある。

期末に計上できる未払賞与は、事業年度終了後1ヶ月以内に支給しないと要件に該当せず認められません。

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